今週から2週にわたり、ゲストに映画監督の坂上香さんをお迎えします。
坂上さんは、アメリカの終身刑・無期刑受刑者を追った映画「Lifers ライファーズ 終身刑を超えて」で知られているドキュメンタリー映画監督です。そんな彼女が、8年という長期間取り組んできた最新作「トークバック 女たちのシアター」を2014年に発表。この映画のテーマは「表現」と「人の変容」です。坂上さんとともに、社会の中で常識や多数派という境界を超えてしまった人たちが「表現」を味方に生き抜く在り様について2回に渡って語りあいます。
最新作「トークバック女たちのシアター」は、サンフランシスコの刑務所で生まれた女性だけのアマチュア劇団「メデア・プロジェクト:囚われた女たちの劇場」を追ったドキュメンタリー映画です。8年という長期間がかけられて撮られた映画ですが、その経過の一端を教えていただきました。メデア・プロジェクトの創始者であるローデッサさんは、当初エアロビクスのインストラクターとして女性刑務所に雇われていたそうです。そこに服役している女性たちは、エアロビクスへのやる気はみられなかったものの、そこで合間合間に語られる人生がすさまじく、これを言葉にしたいというところから、このメデア・プロジェクトは始まっているそうです。
ニューヨークの詩の朗読会で、ローデッサさんが詩を朗読(服役している女性が書いたもの)している姿を聞いて、見て、メデア・プロジェクトの映画を撮りたいと思った坂上さん。ローデッサさんにアクセスしたものの、ローデッサさんもまだ彼女たちと関係づくりをしている最中なので、関係が取れるようになるまで待ってほしいと言われ、待ち続け、徐々に演劇をしているシーンを撮らせてもらえるようになり、少しずつインタビューも撮ってというように、丁寧に関係づくりをしながら撮り溜められた映画なのでした。
この映画の上映会のあり方も特徴的です。上映会で映画を見た後に、必ず観客の方と、この映画について語り合うスタイルを取っているというのです。映画のタイトルにもある「トークバック」は言葉を返す、呼応するという意味もあり、この上映後の語り合いもそこに含まれているそうです。この上映後の「トークバック・セッション」にも重きを置いていらっしゃるそうで、中にはご自身を重ね合わせてご自身の人生を語り始める人、映画の出演者が置かれる境遇に意見をする人、それに答える人といろいろな展開が見られるそうです。つまり、映画を通して、新たな「場」が出来ていくのだそうです。
人の「表現」が収められた映画を観て、また観た人が自分をその場で「表現」する、そして何らかの変容を遂げる。新たな映画の形を教えてもらいました。
放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。
(音声は、放送後の翌週月曜日に更新されます。※祝日の場合は火曜日)
次週も引き続き、映画監督の坂上香さんをお迎えします。11月21日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。