先週に引き続き、毎日新聞の野沢和弘論説委員と社会福祉法人グローの北岡賢剛理事長のお話しです。
後半は、アメニティーフォーラム(毎年2月に大津プリンスホテルで開催されている福祉のフォーラム)で、今や当たり前のように同時開催されているアール・ブリュット展から話は始まりました。
フォーラム会場でなぜアール・ブリュット展を開催することにしたかというと、アメニティーフォーラム講師を含め、全国から1500人くらいの人たちが毎年集まります。せっかく発信力のある講師が来ており、たくさんの受講者もいるのだから、その人たちに向けてもアール・ブリュットの魅力を発信しようということで7年くらい前から始めたと北岡理事長は言います。講師等にそこで感じたものを持ち帰ってもらい、それぞれのフィールドで発信してもらえたらという狙いもあったそうです。
野沢さんはこのような北岡理事長の仕掛けについて、展覧会が始まった時には、単純に作品がすごいなと思ってみていたそうですが、後からじわじわとその意味合いに気づかれたそうです。障害のある彼らは福祉サービスの受け手であるだけではなく、いろいろ発信する側でもあるということが形となっているのがアール・ブリュット展で、普段は支援する側である人たちが、作品を通して彼らの発信を受け止める側になるという逆転劇があの場で起きているということに気付いた時には鳥肌が立ったと言います。
北岡理事長はまた、アール・ブリュットが次の社会の共生の形を作ってきているのではないかと思うそうです。例えば美術界の人の中にもアール・ブリュットの世界に憧れを持つような人も出てきていて、障害ということが共生の新たな形を示すということが具体的に起きてきていると。これについて野沢さんも、作品が触媒となるという効果はあると思うそうです。言葉がない方でも、作品がその作者に代わって作者のことを伝え、その人を理解することにつながるということがあるからと。
NO-MAが、地域のたくさんの人をボランティアとして巻き込んだ「アール・ブリュット☆アート☆日本」展について北岡理事長は、ボランティアの方がいつの間にか作品や作者について語っているのを聞いた時が驚きであり、嬉しさでもあったそうです。美術という関係性の中で、自分の役割を感じていくという過程も面白いと思ったそうです。
野沢さんは、日本はもともと多様性に富んだ国であり、ここ数十年で都市部に人が集まってしまっただけで、こういった展覧会の取り組みは、そもそも日本が持っていた良さを提示している活動の一つだと思うとのことでした。
最後に、お二人に「アール・ブリュットと日本」というお題で一言ずつもらいました。
北岡理事長は、NO-MAが開館して10年で環境が変わってきたと言います。作品を通じて、障害のある人の魅力が伝わってきたように思うそうで、こういう人たちとなら共に生きていけると感じられる可能性、手ごたえを感じてきたそうです。
野沢さんは、アール・ブリュットの本当の魅力を全部まだ知ることが出来ていないと感じていると言います。そこにどう近づいていくかは、人間、社会の本質をどう理解するかに関わっていると考えているそうで、モノは満たされ、別の価値観といったときに、障害のある人の可能性はまだまだ広がると思うとまとめられました。
放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。(音声は、放送後の翌週月曜日に更新されます。※祝日の場合は火曜日)
次週は、大阪に拠点を置くgrafの代表で、滋賀県ブランディングディレクターの服部滋樹さんをゲストにお招きします。9月11日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。