今週は、「場とコトLAB」代表、公益財団法人伊丹市文化振興財団 地域・施設連携担当の中脇健児さんをゲストにお迎えしました。中脇さんは、「遊び心」をキーワードに関わる人全員が主役になれる場を創り出し、兵庫県伊丹市を中心にミュージアム、商店主、行政、市民を結びつけるプロジェクトを多数展開されています。近年は関西一円に活動を広げ、衛星都市、観光地、過疎化の集落など、あらゆる場面でワークショップを実施し、愉快な「街」をつくる活動をされています。
中脇さんは、自身の専門について「“まちづくり”と“アート”の間にいること」と話されました。その言葉を表すように、これまで、街、人、文化を繋げる様々なプロジェクトを展開してこられました。
中脇さんが手がけるプロジェクトの一つに「伊丹オトラク」という、11年続いている音楽イベントがあります。「伊丹オトラク」は、「普段使いの音楽プロジェクト」というテーマのもと、音楽がホールを飛び出して、街のいたるところで、聴くことができるというイベントです。例えば、街中の広場でコンサートをするにしても、ステージを組むのではなく、木陰で生楽器の演奏を行ったり、城跡公園の石垣を客席に見立ててライブをするなど、街の人たちと協力し合い、街の景観を活用しながら行われるのが特徴です。このプロジェクトがスタートした11年前は、現在行われているような内容ではなかったと言います。というのも、もともとは、地域のカフェやバーで行われている音楽イベントの情報を取りまとめ、地域の人たちとネットワークを築いていくことを目的にスタートした事業なのだそうです。プロジェクトへの反響や、地域の方々の声を聞く中で、年々、内容とコンセプトを変えていき、現在では、伊丹市の大きな音楽イベントへと発展していきました。
続いてご紹介いただいたのは、毎年9月中旬に開催される「鳴く虫と郷町」。このイベントは、JR伊丹駅から阪急の市街地(歩いて15分ほどの距離)を中心に、15種類3000匹というすごい量の鳴く虫を、商店街やミュージアム、街路樹などに展示し、秋の訪れとともに虫の音を愛でるというイベントです。さらに会期中は、虫や秋、日本といったキーワードに絡んだ60種類ものイベントも実施されるそうです。「鳴く虫と郷町」も「伊丹オトラク」も、事業として広がていった時、地域の方から「これは、文化施設のイベントではなく、地域のイベントでもあるので、みんなで考えたい」という声が上がったそうです。地域の人たちが事業に対して親しみを持てば持つほど、「あれもしたい」「これもしたい」と様々な意見やアイデアが上がってきます。そのため、事業に関わる人たちの立場をフラットにし、みんなの要望を実現化させていく手立てとして、独学でワークショップを始めたのだそうです。いまや「鳴く虫と郷町」の会期中の60あるイベントの半分以上は、市民の人たちが自主的に考えているそうです。
また、中脇さんは近年、淡路島で家業・生業の起業や商品開発をサポートするプロジェクト「淡路はたらくカタチ研究島」にも島外の講師として関わっています。生産現場に携わる人たちに集まってもらい、観光開発やブランディングに関わる勉強会を開くとのことです。その土地の人たちの声を聞くことで、「もともと持っている力」を磨いていくことが重要で、それは、ベッドタウンの伊丹であっても、生産者の多い淡路島であっても変わらないと話されました。中脇さんはワークショップを行う際、8割方は構成を練るとのことですが、いざ臨む時には、まっさらな気持ちでいることを心掛けているそうです。それは、多様な意見で場が荒れそうな時、柔軟な対応が求められるからだそうです。また併せて、多くの意見に向き合う姿勢の大切さを強く語られました。向き合う姿勢が伝われば、どれだけ意見が荒れたとしても、場を共有するプロセスが信頼関係を築き、前に進み始めると。
放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。(音声は、放送後の翌週月曜日に更新されます。※祝日の場合は火曜日)
次週も引き続き、ゲストは中脇健児さんです。10月9日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。