今週は、1月15日(金)から開催される「第12回滋賀県施設合同企画展」後期展示の出展者の制作現場からのリポートです。
訪れたのは、滋賀県甲賀市にある信楽学園。信楽学園では15才から18才までの主に知的障害のある児童が、3年間の職業訓練と寮生活を通して生活力と社会性を育んでいます。今回はその施設の訓練の中から派生的に生まれた作品を出展した谷本達哉さんを取材しました。
谷本さんが出展したのは、紙製のフラットファイル。元々「作業日誌」を綴るためのファイルだったのですが、ファイルそのものがたくさんの文字や数字埋め尽くされています。内容を見ると、メモのようでもあり、作業中の態度や成果を得点化するルールを描いているようでもあり、スケジュールがかかれていたり、気持ちのようなものが書かれていたり、一部イラストもあったり……。一見乱雑に見えるのですが、一つ一つの文字は上手な字です。
このファイルの秘密を谷本さんご本人にいろいろとお聞かせいただきました。
ラジオ取材に緊張され、普段に比べるとあまり喋らない状況だったそうですが、それでも質問一つ一つに丁寧に答えてくださいました。
作業へ取り組む姿勢や振る舞いに応じてポイントが得られたり、減ったりする「得点表」なる仕組みを谷本さんと職員とで作り、それを書き込んでいるということや、ふと谷本さんが思いついた架空のドリンクや、その場で交わされていた言葉等が書き込まれているということを教えてもらいました。
普段、谷本さんの作業を担当している職員の涌井さんからも、この「作業日誌」が生まれるに至った状況などを教えていただきました。信楽学園を利用し始めた頃は早く信楽学園から出たくて、このポイントを貯めて信楽学園を退所するという思いだったそうです。そこから3年間を経て今年いよいよ園を出るわけですが、その気持ちを尋ねると意外な答えが返ってきました。
「作業日誌」ファイルが作品として飾られる展覧会、誰と一緒に見に行きたいですかとお聞きすると、「信楽学園のみんな」とのことでした。飾られている作品を前に、園のみんなに控えめながらも自慢する谷本さんの姿を想像し、早くその日が来ないかなと思った取材でした。
放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。(音声は、放送後の翌週月曜日に更新されます。※祝日の場合は火曜日)
次週は、NPO法人福井芸術・文化フォーラムの荒川裕子さんと濱見彰映さんをゲストにお迎えし「福井という土地から障害福祉×アートを根づかせてゆくこと」と題してお話しを伺います。1月15日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。