そして、そこでは肉体が風景になっている。ハンス・ベルメールのドローイングにおいては、肉体が縛られつつ、ねじられつつ、ひとつのオブジェとしてスケールを守っていた。余白の中で、あるいは森の中で、周囲との関係を持たずに孤立性を保っていた。けれども、魲の作品では、肉体が巨大化し、あるいは増幅し、世界を覆っている。その形は、周囲の物の形との相関関係において、決定されており、絵全体が、いわば風景化している。
この文章は、東京現代美術館主任研究員の保坂健次朗氏によるもので、NO-MAで販売している作品集『日本のアール・ブリュット“魲万里絵”』に掲載されています。この後も、同氏の小論文では、魲万里絵さんの作品についての考察が、独自の角度から繰り広げられています。
例えば、
魲の作品を眼の前にしたときの私たちの心の震えを、それ以上、言葉に置き換えることはできない。なぜか?それはそれこそが、魲の作品の本質だからだ。
そこになにが描かれているのか、そしてそれを通して私たちが感じるこの感情はいったいなんなのかと、とかく意味を求める私たちの欲望に対抗するべく、彼女は形態の強度をあげていく。
作品集『日本のアール・ブリュット“魲万里絵”』カバー
このように、他の画家との比較や、作品の分析により、語られる魲さんの作品論。また、本書では、65頁に渡り、魲さんの作品をカラーで掲載していることに加え、パリ市立アル・サン・ピエール美術館長のマルティーヌ・リュザルディ氏による論考も掲載しているなど、様々な角度から魲万里絵さんの作品の魅力を紐解いています。
ファンにとってのマストアイテムであること間違いなしの、本書はNO-MAで販売しております!
魲さんの世界を存分に楽しめる展覧会「魲万里絵 遠くて近い私の風景」は8月21日まで開催しております。
どうぞお見逃しなく。
「魲万里絵 遠くて近い私の風景」
会場:ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
開館時間:11:00~17:00
休館日:月曜日(祝祭日の場合は翌日休館)
観覧料:一般300円(250円)高大生250円(200円)
※中学生以下、障害のある方と付添者1名無料 ※()内は20名以上の団体料金