今日は、大手損害保険会社勤務のかたわら「男の宝塚」評論家として、金融誌のコラム連載や地元の市民大学での講演などでご活躍の今井英雄さんをお招きします。今井さんはまた、アール・ブリュットのファンとしてこれまで様々な展覧会やアール・ブリュットにまつわる企画に参加されてきました。そんな今井さんに、これまでにもこれからもない切り口、「アール・ブリュットと宝塚歌劇の共通点」をテーマに語っていただきます。
今井さんとアール・ブリュットとの出会いは、会社関連の公益財団に所属していた時でした。その財団は、障害福祉の助成もしており、パリ展(「アール・ブリュット。ジャポネ」展)の報告書への助成について相談が上がったことで初めて知ることになります。パリ展を国内で広報するために設けられていた実行委員会にもオブザーバーとして参加され、そこで澤田真一さん、魲万里絵さんの作品に出会い一気に魅了されたそうです。美術館の中には、同じような傾向の作品が多く並ぶこともありますが、そういうことがなく、また見たことのないタイプの作品群に衝撃を受けたそうです。
一方、もう一つ熱中している宝塚歌劇。子どもの頃からの憧れ、関心はありつつも住んでいたのが新潟だったため、観劇は叶いませんでした。チャンスに恵まれ行ったのは、40歳を過ぎてからだそうで、そこは想像以上に華やかな世界。こちらも一度で魅了されたそうです。
宝塚歌劇の魅力は男性ファン目線で見ると、最初は美人の娘役がたくさんいるということだったそうですが、見続けていくと男役の様式美に引き込まれていったそうです。男役が演じるのは完全無欠な男性であり、本物の男性より格好いいのです。
宝塚歌劇の歴史を振り返ると、東京で好評得ても評論家には取り上げられず無視されていた時代がありました。原因はテーマパークの一部で行われるショーであったこと、独身女性だけという特殊な構造などであり、特殊な演劇という扱いでした。
しかし、「ベルサイユのばら」の出現が宝塚歌劇を大きく変えることになります。「ベルサイユのばら」の上演の前後では客数も客質も変わったのだそうです。これに呼応して、宝塚音楽学校の入学希望者が増え、入学倍率も一桁だったのが最低でも10倍、最高で40倍という状況になります。このことでミュージカル自体のレベルも上がり、振り付けも高度になり、人気と実力を備えた今の宝塚歌劇となっていったのだそうです。
アール・ブリュットも同じように、特殊な芸術という扱いの様相を呈している部分があるので、宝塚歌劇における「ベルサイユのばら」のようにとにかく集客をする仕掛けが必要ではないかと今井さんは考えています。人に見てもらえれば、作品の力はそもそもあるのだからと。その具体的なアイデアも披露してくださいましたが、アール・ブリュットも宝塚歌劇もファンという今井さんならではのユニークなものでした。
放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。(音声は、放送後の翌週火曜日に更新されます)
来週は、社会福祉法人グロー法人本部企画事業部の安藤主任と山田自立生活支援員がゲストとして登場し、タイでの作品調査の様子を報告します。9月2日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。