9月のゲストは、民族研究者で介護福祉士の六車由実(むぐるまゆみ)さんです。六車さんは大学教員の仕事を経験したのち、高齢者介護の現場でスタッフとして働くという異色の経歴の持ち主です。民族研究者として培った「聞き書き」を介護の現場で実践しておられ、「介護民俗学」とも言える取り組みを提唱されています。
高齢者介護の現場で働くようになったきっかけは、意外なことでした。
現在のデイサービスの前にも、特別養護老人ホームにもお勤めでしたが、そこでも「聞き書き」による「思い出の記」を編纂されていました。「聞き書き」はいわばクセのようなものと六車さん。利用者の方々が語る、面白い話を書き留めずにはいられないと、六車さんはいつもウエストポーチを身に着けておられます。中には、メモ帳、ペン、ボイスレコーダーが入っているそうです。
似ているとされる「回想法」と「聞き書き」の違いについても、お話しくださいました。
「聞き書き」の目的を端的に言うと?との問いに、困りながらも「利用者さんの記憶を継承すること」と。
また、地域の中にある介護の現場は、介護が提供される場所=介護される人が集まっている場所というだけでなく、その地域のことをたくさん知っている人たちが集まっている=地域のことがわかる場所、地域の記憶の原点であるべきという考えも話されました。どのお話も「なるほど」の連続で、幾度もうなずいてしまうものでした。
放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。
(音声は、毎週月曜日に更新されます。)
次週も引き続き六車由実さんにお話を伺います。介護現場、アール・ブリュットが発見される過程と「聞き書き」の親和性など興味深い話が展開されます。来週は9月12日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。