先週に引き続き、民族研究者であり、デイサービス「すまいるほーむ」管理者・生活相談員の六車由実(むぐるまゆみ)さんにお話を伺いました。
ご本人が話さなければ出てこない記憶、それを引き出す「聞き書き」。引き出された記憶に反応し驚いたりすることは、忙しい介護現場の中では、あえてされてこなかったことであり、認知症の人の発言はあまり意味を持たないという認識も多い中、六車さんは驚き、書き留め、発言の奥にある意味を探って来られました。介護現場でも、その日提供したサービスやご本人の様子を記録されてはいるが、「記録はあくまで記録」と六車さん。「聞き書き」はある意味作品を作ることでもあるそうです。
「すまいるほーむ」のスタッフには、「作品」を作るよう言っているとのこと。「作品」とは、広く普遍的で、それを見た人がまた触発されて次に広がっていくものを指しています。
この日、納涼祭の様子をビデオカメラに収めていた男性スタッフがいましたが、彼にも「作品」にするよう話しているそうです。
ビデオ撮影をするスタッフの村上健さん。「すまいるほーむ」に来るまでは、演劇をされていたとのこと。
ケアのあり方についても触れられ、技術としてのケアではなく、人間と人間としての関わりでありたいとのこと。そうすることで人間と人間として近しくなり、ケアの場をともに作っていくことができるとのこと。
著書『驚きの介護民俗学』(医学書院/2012)の中では、民俗学を学ぶ人こそ福祉現場に入るべきと記されていましたが、今はさらに「表現手段を持っている人が福祉の現場に入るべき」とも思っておられるとのこと。現場自体を変えていく力があるからと。
最後におっしゃっていた、福祉現場における日常性の回復ということは、福祉現場で働く人、福祉サービスを利用する人、福祉に直接は関係していない人、さまざまな立場の人にいろんな意味を持って響く言葉ではないでしょうか。
放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。
(音声は、放送後の翌週月曜日に更新されます。※祝日の場合は火曜日)
次週は、六車由実さんが働いておられるデイサービス「すまいるほーむ」の納涼祭からの現地リポートです。納涼祭にも「聞き書き」が存分に活かされています。9月19日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。