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ラジオ番組「Glow 生きることが光になる」 『目に見えない表現と向き合う、近づく。やさしい美術プロジェクトの実践か

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新年1月2日、9日のゲストは、アーティストであり、名古屋造形大学教授の高橋伸行さんでした。
高橋さんは、これまで病院、老人福祉施設、障害者施設、ハンセン病療養所や東日本大震災被災地域などで様々なアートプロジェクトを展開されてきました。障害のある方が取り組む造形活動にも精力的に関わる中で、アール・ブリュットとはまた違った“出来事としての表現”に取り組む「やさしい美術プロジェクト」についてお話を伺いました。

1月2日放送分

高橋伸行さん(左) アサダワタルパーソナリティー(右)

高橋さんがディレクターを務めるやさしい美術プロジェクト。このプロジェクトは「やすらぎの感じられる医療環境」と「文化を発信する地域の人々に開かれた病院」を創出することを目的として始まりました。プロジェクト名は、「美術」と一緒にはあまり使われることのない「やさしい」という言葉をかけ合わせてみよう、人に寄り添っていく形の美術というものがあっても良いのではないかということから名付けられたそうです。
足助病院(愛知県)とのプロジェクトがスタートでしたが、アートプロジェクトとはいえ、最初から「作品を作り、展示する」ということを大前提にしなかったそうで、このことが今に続くやさしい美術プロジェクトの特徴ともなっていきます。
足助病院では病院の了解の下、患者さんにインタビューすることからはじめ、お一人お一人のお話を丁寧に伺い、それぞれの方の背景を知ったことが結果として作品の素材となっていったそうです。このように、その「場」にいる人に寄り添っていく、そこにいる人とのコミュニケーションを大事にするということを根底に、やさしい美術プロジェクトは展開していきます。病院以外の場所でも展開を見せ、最近では高齢者のデイサービスもフィールドとなっているそうです。次回は、ハンセン病の療養所の一つである大島(香川県)でのプロジェクトを通して、やさしい美術プロジェクトの本質に迫ります。

1月9日放送分

 大島でのプロジェクトは、瀬戸内国際芸術祭のディレクターに声を掛けられたことがきっかけだそうです。国立療養所大島青松園は全国に13あるハンセン病療養所の一つです。島を訪れた際、療養所で暮らすとある方に「一杯飲むか!」と声を掛けられ嬉しくなり、「次来る時に酒を持ってきます」と約束をし、次の機会にその方のお住まいで酒を酌み交わした高橋さん。そこから少しずつ関係が出来ていく中で、島での生の暮らしが伝わってくるようになったそうです。

島が何かを表現していると感じる一方、そのことは島の外には伝わっていないということも同時に感じ、大島の療養所で暮らす人の声、島の人たちが生きてきた証を知らせるのが自分の役目だと思ったそうです。療養所で暮らす人たちの息遣いを少しずつすくい取って伝えようと、彼らが普段使っている日用品を展示することに。そこで生活する方々にとっては当たり前のものでも、外の人からすると、その人たちが生きてきた証、力に見えるということが確信としてあったようです。芸術祭に訪れた人が、それらの展示品をつぶさにみる、関心がある人は質問もするということで、療養所で暮らす人たちも誇らしげに「こうやって自分たちは生きてきた」と話すことが出来ることにつながったそうです。あたり前のものとして捉えていたものが、「見る人」の存在によって違った形に見え、価値のあるものとして捉えなおされた瞬間です。

このことは、アール・ブリュットとも共通すると高橋さんはおっしゃいます。作った人と見る人が作ったものを通してつながる、その根底にはその相手方を大事にしたいという思いが流れているということです。最後に、高橋さんはプロジェクトを継続することの大切さについて触れました。継続することで何かが見えてくることもあるからと。
とにかくそこにいる「人」を大事にするというスタンスがお話し全般を通してひしひしと伝わってきて、そこに横たわる関係そしてそこから生まれ出る作品とも、「やさしい美術」というネーミングがぴったりであると改めて感じさせられました。

放送をお聴き逃しの方、カバーされていないエリアにお住いの方も是非Podcastからお聴きください。
(音声は、放送後の翌週月曜日に更新されます。※祝日の場合は火曜日)

1月16日(金)は、ゲストに滋賀県医師会長の笠原吉孝さんをお迎えします。笠原医師は、アール・ブリュットを発信することを一つの使命としているNPO法人の理事長も務めていらっしゃいます。医師としての立場から、なぜアール・ブリュットの発信ということに至ったかお話を伺います。1月16日(金)21:30~21:55 KBS京都ラジオです。

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