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NHK「人知れず表現し続ける者たちⅡ」で紹介されたKOMOREBI展の作者たち

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6月30日(土)23時から放送のNHK「人知れず表現し続ける者たちⅡ」。
本記事では、番組の中で登場した3名の作者についてのご紹介をします。
今回の番組にご関心をお持ちの方は、より楽しんでいただけるのではないでしょうか。

日本のアール・ブリュット「KOMOREBI」展は昨年10月にフランスのナント市で開催され、日本のアール・ブリュット作品を紹介した展覧会です。
木々の葉を通して差し込む太陽の光を意味する「木漏れ日」 と名付けられた展覧会には、全国20都道府県から42名の作品 が展示されました。会場となったフランス国立現代芸術センターリュー・ユニック館長のパトリック・ギゲール氏は、日本語にしかないこの言葉に「亀裂の間から私たちに届く心の内の光」を感じ、その光の独特なきらめきに「生」の形 で表現されたアーティストの世界観を重ね、この名前が命名されました。初日の夕方に始まったオープニングでは入場規制がかかるほど人が押し寄せ、1,500人が来場しました。最終的には、2017年10月21日~2018年1月14日の会期で、55,000人の来場を記録し、盛況のうちに終了しました。

■文化庁委託事業「平成29年度戦略的芸術文化創造推進事業」
障害者の文化芸術国際交流事業「2017 ジャパン × ナント プロジェクト」

番組で紹介された3名の「KOMOREBI」出展者について、展覧会図録から抜粋し、ご紹介します。

魲万里絵 1979年生まれ / 長野県在住

≪(いかん)のい!≫ 2015年 1093×1580mm

乱立する乳房や性器、子どもとも大人とも言いようのない人の形、無数のはさみ・・・
 2007年のある時、彼女は頭の中でうごめく形象を描きたい気持ちがあることに気づいたという。それからは、毎日のようにこれらの作品を描き続けている。「描くと落ち着く」そうで、今や生活の中で必要不可欠な時間となっている。
 彼女はマーカーペンを使用し、まず輪郭を描き、その後、中のディテールを塗り込んでいく。塗りつぶしているように見える部分には、よく見ると、トントントンと点を打ち込むようにして塗り込む独特な技法を用いているところがある。
 以前は、その技法を用いるのは赤色のみだったが、近年は他の色においてもその技法が見られる。小さなノートや屏風などさまざまなサイズの作品があり、制作期間は一週間から数か月かかるものまである。最初から完成イメージがあるわけではなく、その時に浮かんだイメージを描くことが多い。特徴的なタイトルは、完成した絵から思いついた言葉をつけたもので、思いつかなければタイトルはつけないという。
 大地に水が沁み入り、緑がわっと広がるような勢いで、作品は生み出されていく。その細やかで繊細な描写とは裏腹に、生まれくる作品の量と進化していく様に驚かされる。それほど彼女は表現することに渇望しているのだろう。
(KOMOREBI展図録より転載)

戸谷誠 1944年生まれ / 東京都在住
(画像はクリックすると拡大します)
≪NO.38 1998.10.25≫(部分)1998年- 280×19420mm

現在73歳になる戸谷は、10代の頃より絵を描きはじめた。昔、両親が調剤薬局を営んでいた自宅で、近年は朝から晩まで創作に没頭している。マラソン選手がランナーズハイになるように、絵を描いている時はその瞬間に幸福のピークを感じることがあるのだという。ただ時間が経つとそう感じなくなったりすることもあるようで、なぜ絵を描き続けるのか、掴めるようで掴めない、うつろう心模様とともに創作に向かっている。 
創作は大きく2種類ある。一つは、B1サイズ程のわら半紙に描かれる創作。二つ目は、長さ約19mの障子紙に描く壮大な絵巻物の創作である。絵巻物は、現在創作途中のものを含めて45本ある。女性や男性、神仏、架空の生物、月や太陽・山・緑などの自然にまつわるものなどが組みあわされ、独特の穏やかな世界観と美しさを表している。はじめから何をどのような構図で描くのかは決めておらず、紙面に向かいあった時に浮かんだイメージのままに描いていく。戸谷いわく「最初からイメージ(構図)が決まったものを描いていたらつまらない」とのことだ。
 自身の中に去来するイメージと出会う楽しみが尽きることなく創作する戸谷は、紙面の中に飽きることのない宇宙を見つけたかのようだ。
(KOMOREBI展図録より転載)

平野 智之 1987年生まれ / 東京都在住

 


≪美保さんシリーズⅧ(名古屋)≫(一部)2017年 297×210mm

 摩訶不思議で奇想天外な世界観。注意深く作品の中で起こっている出来事に目を向けていく。平野の作品は彼の意識や意図が細部にまで緻密に組み込まれている。
 平野は、彼自身が好むさまざまなもの(童話やディズニーアニメ、靴、施設職員や仲間、電車など)を、断片的に切り取り、組みあわせ、コミカルに物語を展開させていく。多くのシリーズで登場するのは、平野が通う施設にいた元職員の「美保さん」。「美保さんの目は緑、そして目の中には花びら」と細かい部分のイメージも明確にある。子どもの頃から好きだった「土足」(平野は靴を土足と表現する)もフォーカスされる。土足が乗り物に変化し、土足の内部から見える窓ガラス越しの景色が描かれる作品も楽しい。
 自宅では絵の制作、通所する施設では、作品に合わせた言葉遊びや独特で詩的な言い回しの字幕(テキスト)をパソコンで入力。目立たせたい主要な部分のみに色鉛筆で着色し、最後に自分が好きな構図にはさみで切り取りトリミングする平野のスタイルは、作家というよりは映画監督といったほうがしっくりくるほどである。
 空想と想像力の連立、作家の思考と哲学。人が表現するとき、それは何次元にも
なることを平野の作品は教えてくれる。
(KOMOREBI展図録より転載)

さらに、魲さんと平野さんは、本年3月までKBSにて放送しておりましたグローのラジオ「GLOW 生きることが光になる」にご出演いただいたこともございます。
その時の放送回は、以下よりご視聴いただけます。

■魲万里絵出演回
NO-MAで魲さんの個展を行ったときのトークイベントの模様です。魲さんが自身の制作についてお話しされています。
前半
後半

■平野智之出演回
こちらから
KOMOREBI展に出展した作者やご家族によるトークセッションの模様です。

本日は、KOMOREBI展に出展した3人についてご紹介しました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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