2008年2月28日(木)~5月11日(日)
アール・ブリュット・コレクションとボーダレス・アートミュージアムNO-MAとの連携事業におけるこの企画展は、双方の作品を共通のテーマを基にコラボレーションさせて観ていただくという新機軸の企画です。アール・ブリュットと称される作品たちは、美術界の中の文化潮流や伝統、また流行などとは無関係に存在しています。それは人が人として存在する上で根源的に持っている「表現したい衝動」というものの在処を、洋の東西を超え人間の共通普遍的な力として、ありありと感じとっていただけるでしょう。
この展覧会は、アール・ブリュット・コレクション(スイス ローザンヌ市)とボーダレス・アートミュージアムNO-MA(滋賀県近江八幡市)との連携による企画展です。
アール・ブリュット(またはアウトサイダー・アート)と称される作品たちは、正規の美術教育を受けていない人たちによって、文化潮流や伝統または流行などとは無縁に制作されています。作り手本人のやむにやまれぬ何かの思いにのみ司られ、作られているのです。それゆえ作品は、人が人として存在する上で根源的に持っている「表現したい衝動」というものの底流を、ありありと伝えて来ます。
欧米では既に価値付けられているアール・ブリュット・コレクションの作品と日本国内の作品が、洋の東西を超えてここに初めて共存することになる前例の無い試みが、このたび実現されます。双方の「交差する魂」は、私たちに未知の視野を見せてくれるでしょう。民族や歴史、文化という背景が異なっても、人が表現に向かう直裁なかたちには共通の夢が内包されており、様々な社会的規制の束縛から精神の自由や独創を獲得する人間の力を、私たちはよりリアルに感じることが可能になるのだと思います。
通常の美術展という枠ではとらえきれないボーダレスな世界。私たちにとって表現とは芸術とは何であるのか。多くの方々にとってそれぞれの心の深い部分で体験していただける機会になることを願っています。
会場 | ボーダレス・アートミュージアムNO-MA/旧吉田邸(近江八幡市多賀町758) |
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開館時間 | 10:00~17:00 |
休館日 | 月曜日(5月5日、6日祝日ですが開館いたします) |
観覧料 | 一般500円、高大生450円、中学生以下無料 |
リュシエンヌ・ペリー(スイス・ローザンヌ アール・ブリュット・コレクション館長)
日時:2008年3月8日(土)13:00~16:00
場所:近江八幡市文化会館(近江八幡市出町366番地)
定員:200名
入場料:500円
はたよしこ(ボーダレス・アートミュージアムNO-MAアートディレクター)
日時:
(1)2008年3月20日(木・祝)14:00~16:00
(2)2008年4月27日(日)14:00~16:00
定 員:各20名
参加費:入館料のみ
「アール・ブリュットって何だ?」
都築響一(写真家・編集者)/斎藤環(精神科医)
コーディネーター:代島治彦(映像プロデューサー)
日時:2008年3月29日(土)13:30~15:30
場所:アンドリュース館(旧YMCA会館・近江八幡市為心町)
「見て、聞いて、話して、もう一度見てみたら」
ナビゲーター:山下里加(美術ライター)
日 時:2008年4月14日(月)(特別開館)
(1)10:30~12:00
(2)13:30~15:00
場 所:ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
定 員:各20名
参加費:入館料のみ
人間の姿は古今東西変わらぬ永遠のモチーフといえます。その姿に自分自身を投影したり、憧れや理想を、また深層には欲情や憎悪をも投影して描かれています。その姿がどんなに奇妙なカタチであろうとも、作り手がどんな状況に置かれていようと、究極において人は常に人を求めているのでしょう。
作 者 名:カルロ
タイトル:無題 制作年不詳 ガッシュ・紙 70×50cm
撮 影:Claude Bornand
収 蔵:スイス・ローザンヌ アール・ブリュット・コレクション
出展作家:アロイーズ/カルロ/小幡正雄/ジョゼフ・ホッファー/ヨハン・ハウザー/久保田洋子
人が集うと集落を形成し、やがて街や巨大な都市を造ってきました。電車や車が走り都市は次々と人や人間の技術を飲み込みながら、理想の未来へと膨らんできたのです。誰もが都市に関心を寄せるのは、それが人間の力によって形作られ、そこには人間の様々な夢が内包されているからなのでしょう。
作 者 名:本岡 秀則
タイトル:電車 制作年 1995年頃~ 鉛筆・色鉛筆・紙 362×257 mm
撮 影:大西暢夫
収 蔵:作家蔵
出展作家:辻勇二/ヴィレム・ファン・ヘンク/本岡秀則/アドルフ・ヴェルフリ
文字は様々な民族や文化の中で、人が作り出した唯一の伝達と記録の方法です。そこには人の「誰かに伝えたい」想いが込められています。たとえ自己流に暴走して、他者には意味が読み取れない文字であっても、文字という形態に全てを託してゆく人の行為には、自己陶酔や快楽の深層心理があるのだと思えます。
作 者 名:戸来 貴規
タイトル:日記
撮 影:大西暢夫
収 蔵:作家蔵
出展作家:ジャンヌ・トリピエ/戸來貴則/富塚純光/レイノルド・メッツ/喜舎場盛也
私たちのこの世界は、きっと微細なモノ達の集まりで形成されているというイメージは、誰もが直感的に持っているのではないでしょうか。その感覚を形にしたい衝動にかられ、やむなく表現してしまう人たちがいます。そのエネルギーに驚嘆しつつも強く惹かれてしまい、私たちも奥深く没入してゆくのです。
作 者 名:ラファエル・ロネ
タイトル:無題 1960年制作 墨・厚紙 21.5×32cm
撮 影:Olivier Laffely
収 蔵:スイス・ローザンヌ アール・ブリュット・コレクション
出展作家:マッジ・ギル/西川智之/ラファエル・ロネ/坂上チユキ
自らのイメージの中にだけ存在する架空の国を具現化している二人の作品です。絵に描くよりももっと具体的な立体像として表わされている作品たちは、観る者をより一層リアルな空想世界に誘ってくれるでしょう。想像しそれを形にすることは、人間だけが持つ豊かで幸福な力だということを感じさせてくれます。
作 者 名:ネック・チャンド
タイトル:ポーター(Ⅱ) 1960~1999年制作 145×32×41cm
撮 影:Olivier Laffely et Sylviane Pittet
収 蔵:スイス・ローザンヌ アール・ブリュット・コレクション
出展作家:ネック・チャンド/澤田真一
今回の連携企画は、当ミュージアムの関係者が日本のアウトサイダーアート作品の資料を携えて、アール・ブリュット・コレクションを訪問したことにより始まりました。館長リュシエンヌ・ペリー氏は日本の作品に大変高い関心をもち、ぜひ自分の目で見て調査や展覧会の企画をしたいと2006年11月中旬、日本側の招待により12日間来日滞在されました。当ミュージアムが日本全国で発掘してきた厳選作品を中心に、数カ所の制作現場をご案内し、また各地から我々のもとに送っていただいた作品など、全部で約300点近い作品を観ていただいたのです。そして予想以上の驚きと感銘を受けられた館長は「アール・ブリュットがその全容については未知だった国」に多大な期待と関心を寄せ、連携展の企画構想が始まりました。
今回の相互連携事業により、近年日本でも注目を集め始めたアウトサイダーアートへの評価を、社会一般に広く認識していただき、その表現者に対して新しい評価軸を確立してゆく事は、より広い視野で「芸術」すなわち人の表現の魅力を直裁に伝える意義ある文化事業でもあると、私たちは考えたのです。スイスのアール・ブリュット・コレクション側と何回にも及ぶ協議を重ねていった結果、双方の作品をコラボレーションさせるという前例の無い企画展の開催に至りました。
また、ほぼ同時期(2008年2月22日~9月28日)には「Japon」展がアール・ブリュットコレクションで開催され、その内10人の日本の作家たちの作品が収蔵されることになりました。http://www.artbrut.ch/ のMediaページから Dossier de presseの「Japon」展をご覧下さい。
この事業は3カ年に渡る継続した連携事業として歩んできました。
【連 携 事 業 (2006年~2008年)】
2006年
●リュシエンヌ・ペリー館長を招き、シンポジウム・記念対談・記念フォーラムの開催(滋賀県・沖縄県)
●リュシエンヌ・ペリー館長を招き各地でワークショップの開催(滋賀県・沖縄県・兵庫県)
●日本全国の障害者施設等における造形活動の調査・研究
2007年
●展覧会 「アール・ブリュット/交差する魂~ローザンヌ アール・ブリュット・コレクションと日本のアウトサイダー・アート~ 」開催準備
2008年
●スイス・日本にて展覧会を同時開催(日本で2008年 1月16日~ 7月20日)
●「アール・ブリュット/交差する魂 ローザンヌ アール・ブリュット・コレクションと日本のアウトサイダー・アート」の開催
【展覧会場および展覧会期】
1月16日~2月17日 北海道立旭川美術館 (北海道 旭川)
2月28日~5月11日 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA+旧吉田邸(滋賀県 近江八幡)
5月24日~7月20日 松下電工汐留ミュージアム(東京都 新橋)
2008年 2月22日~9月28日 スイス・ローザンヌ
▼アールブリュット・コレクションによる企画展「JAPON」展の開催
▼日本の作家とアール・ブリュット・コレクション関係者との交流
(「JAPON」展オープニングイベントへの参加)
▼アール・ブリュット・コレクションへの視察事業