Jul 18 |
対話の庭鑑賞プログラムⅡ「作品をみる、かんがえる、はなす、きく」(6/29) |
今日は、6月29日(土)に実施した「対話の庭」展関連イベント「作品をみる、かんがえる、はなす、きく」の様子をご紹介します。
「対話」をテーマにした本展であるだけに、会期中いろいろなアプローチで鑑賞プログラムに取り組んできましたが、今回は、本展企画担当の横井学芸員による「つくる」要素を取り入れた作品鑑賞を行いました。
作品を「みる」だけでなく、参加者が実際に「つくる」ことを通して、作家の世界に触れてみようというプログラムです。
今回、鑑賞する作品は、杉本たまえさんの「カタルシス」シリーズです。
まず、5分ほどの間、じっくりと作品を観たあと、横井学芸員によるファシリテートでさらに鑑賞が深まります。
横井「なにか感じたことや気づいたことはありますか。」
「近くでみると細かな線や丸のようなものがいっぱい描かれている。」
「洋服の際(キワ)に力をいれて描いているみたい。痛々しいような印象。」
横井「なにが描かれているのでしょうか。」
「服・・・」
横井「どのような服でしょうか?」
「おしゃれな服というよりも部屋着のような感じがする。」
「女性物のような感じがするけど、もし実物大だったらと考えると巨大な人かなと思う。」
「私は華奢なイメージを持ちました。」
横井「どうして華奢なように思いましたか?」
「ぼやっとした感じや、細かな描き方からしても繊細な感じがするから。」
「大事な人の服とか、思い入れのある自分の服とか?」
「逆にもしかしたら嫌いな人の服かも」
横井「どうしてそう思いますか?」
「描き方かもしれないが、普通絵を描きなさいと言われたら、素材とか絵柄とかを表現したがると思うのに、それをわざとくりぬくように描いているから。」
「なんでそうしたんだろう・・・」
このあと、NO-MAの2階に移動して、杉本さんの作品素材と同様に紙(ここではA6サイズの画用紙を使用)と6Bから9Hまでの鉛筆をつかって、鍵や腕時計など、参加者がその時に持っていたものを30分ほどかけて描きました。
描き終わると、楽しかった、無になるような感覚で自分と向き合っているように思った、かたどることが難しかったなどと感想があがり、参加者はどこかほぐれたような雰囲気でした。
「たくさん色を塗りたくなる衝動に駆られたのですが、際(キワ)にくると落ち着いて冷静になれた。なので、作者も衝動に任せてというよりは描くことで落ち着いていたのではないかなと思った。」
横井「無になるとありましたが、作品を観るだけでは出てこなかった意見ですよね。最初、作家の内面性に関する意見が出ていましたが、その印象になにか変化はありましたか。」
「実際に描くことで作者の心に触れられたような気がする。」
「描いたときになにか伝えたかったということではなく、作者自身が描くという行為が必要だったんじゃないか。」
横井「では、作品と作者のあいだにある関係性は?」
「やっぱり大事なものだったんじゃないかと思う。嫌いなものを描くためにこれだけの時間を費やして描くことは難しいし、描いているときにどこか心地よさがあるから。」
参加者の一人は猫を絵の題材にしていました。
「鉛筆を持って描いてみよう思ったときに、今は亡きグリコ(猫の名前)を描こうと思ったのは大事な存在だったから。杉本さんの作品を観てそう感じたということだと思う。」
杉本さんの作品を真似して描いてみる。
いつもとは違う作品との向き合い方を通して、さまざまな意見がでました。なにが正解ということではなく、作品をみて、絵を描く過程で、作品との「対話」、作者との「対話」、自分自身との「対話」にも繋がったのではないでしょうか。
今後も、皆さんに楽しんでもらえる鑑賞プログラムをご案内していきます。
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「対話の庭」鑑賞プログラムⅡ
「作品をみる、かんがえる、はなす、きく」体験レポート
2013年6月29日(土)13:30~15:00 ファシリテーター:横井 悠
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学芸員K