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Jul

31

エッセイシリーズ「忘れようとしても思い出せない」その3 作者紹介「岡部亮佑」

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現在、NO-MAで開催中の展覧会「忘れようとしても思い出せない」に合わせて、担当学芸員のエッセイを連載します。既に展覧会にご来場の方も、まだの方も、本展の見どころや裏話をご紹介する記事をお楽しみに。

その3 作者紹介「岡部亮佑」

“複雑な発想の経路を味わう”

 NOMA1階中央には、黒い壁を5か所設置しています。展示しているのは、非常にミステリアスな岡部亮佑さんの作品。

 中でも、本展のチラシなどのメインビジュアルにもなっている、赤い服をまとった女性はミステリアスでありながらも、魅力的な存在です。この女性は、岡部さんの絵の中に、時には立ち姿で、また時には座り姿で頻出します。登場するタイミングに規則性は見受けられませんが、常に横向きで描かれるという特徴があります。図1、2の作品では、女性は、紙ににじんだマジックの裏写りを活用しながら、裏表両面にそれぞれ描かれています。岡部さんの作品に象徴的に描かれてきたこの女性の正体は、実は誰にも分っていません。

 作品の中に入れ子構造のような複雑さがあるのも、岡部さんの特徴の一つです。たとえば、図3の作品に描かれているのは、対面して座っているように見える、男女です。男の方は、子どものようにも見えます(幼少期の写真の岡部さんの顔に似ているような気もするので、もしかしたら、岡部さん本人かもしれません)。

男の子の背後にはもう一人の人物がいて、その人物の鼻の輪郭と、男の子の頬の輪郭は一緒の線で共有されているようにも見えます。そして、男の子の左頬には、また別の誰かの顔が描かれています。どうしてこのように描いているのかはわかりませんが、表象同士が融解し、像を結んでいるこの絵に想像を巡らせることは、一目ではなかなかわからない、複雑な岡部さんの着想の経路を辿っていくような楽しさがあると思います。

 

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